これまでの開発過程において、生産条件を決定する際には、主に2つの課題がありました。
① 実験条件のわずかな変動やスケールアップに伴って、性能が安定せず、再現性が得られにくい。
② パラメータの相互作用を含めた許容範囲やデザインスペースを把握するためには、膨大な手間と時間を要する。
その結果、初期に得られた条件が実用段階では適用できず、開発後期に再度条件を検討する“手戻り”が発生。これがリードタイムやコストの増加を招いていました。
新機能「QbD プロセス検討機能」では、最適化の過程で獲得したデータを使用して、品質を維持するためのパラメータ変動の許容範囲である、デザインスペースを最適化とともに推定します。
QbD プロセス検討機能がアステラス製薬株式会社様との共同研究において実際に活用され、第24回再生医療学会総会にて成果報告されました。
本共同研究では、AI とロボティクスを組み合わせた細胞培養プロセスの自動化・最適化に取り組み、幹細胞培養条件の検討を行いました。
① 文献データに比べて分化効率を50~100倍に改善する条件を発見
② 条件探索と同時にデザインスペースの推定に成功(QbD プロセス検討機能を使用)
本成果は再生医療学会のランチョンセミナーにてご報告させていただき、多くの反響をいただきました。
「Epistra Accelerate」は、最適な条件を見つけ出すために、有望な傾向が見られる領域に探索を集中させる仕組みを備えています。ランダムな条件探索や従来の実験計画法に比べ、より短期間で効率的な条件最適化が可能です。
さらに、最適条件だけでなく、その周辺でパラメータが変動しても品質を維持できる「ロバストな条件」も、最適化の過程で得られたデータから自動的に導出します。
これにより、性能変動リスクが高いパラメータを、開発初期から把握・設計に反映することができ、QbDを意識した堅牢な開発が可能となります。
今回新たに搭載された「Epistra Accelerate」のQbDプロセス検討機能では、最適化の過程で得られたデータをもとに、パラメータの変動に対する許容範囲を等高線として可視化します。
これにより、パラメータ間の相互作用を踏まえたデザインスペースの把握を、従来よりも少ない実験回数で実現でき、開発初期段階から効率的かつ実践的なQbDアプローチが可能となります。